大判例

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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和32年(う)308号 判決

まず、所論は、原判決は、被告人は村屋美代子、柳田アサミに対し接客婦として働くことを勧誘して労働者の募集に従事したと判示しているが、被告人は右両名を勧誘したことはなく、原審相被告人富田金次郎のあつ旋によつて雇用するようにしたものであるという。そこで、考察するに、職業安定法は、同法第六三条第二号において、「公衆衛生上又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者」を処罰する旨規定し、同法第五条第六項において、「労働者の募集とは、労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人をして労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘することをいう。」と定義し、募集従事については定義していないが、募集従事とは、右募集の定義の中雇用者が他人をして勧誘した場合における、その他人の雇用者の依頼による勧誘行為をいうものと解され、右募集従事者のする勧誘というのは、前記募集の定義において明かなように、労働者となろうとする者で就職先のきまつていない者に対し募集従事者が依頼を受けた特定の雇用者の被用者となることを勧誘することであつて、被募集者に就職の意思のあることは前提としており、またその勧誘に至る過程において他人のあつ旋が加わつていても構わないのである。そして、原判決挙示の各証拠殊に被告人の司法警察員に対する供述調書、原審証人柳田ハヤミの供述によれば、原審相被告人富田金次郎のあつ旋が加わつていることも認められるが、被告人が接客婦として働く意思のあつた村屋美代子、柳田アサミに対し直接依頼者小西方で働くよう勧誘をしたことが充分認められるから、論旨は理由がない。

つぎに、所論は、被告人は京都市の特殊旅館営業小西卯三郎から同人の代理人として雇用の依頼を受けて雇用行為をしたものであつて、募集の依頼を受けて募集行為をしたものではないという。しかしながら、雇用者と特定の被用者との間の雇用契約を代理人として締結するよう依頼を受けたというのであればともかく、被用者を特定せずこれを探し求めてその求め得た被用者と代理人として雇用契約を締結するよう依頼を受けたときは、募集の依頼を受けたものというべきであつて、このような募集の依頼を受けた以上、所論のように雇用者の代理人であるからといつて、募集の依頼を受けなかつたとすることはできない。要するに、雇用者と募集従事者との関係は、募集従事者が雇用者の被用者であつても、雇用契約締結の代理人であつても、その他の私法上の関係にあつても、募集従事者が、被用者を特定せずこれを探し求めるよう依頼されたときは、募集の依頼を受けたことになるのである。そして、原判決挙示の各証拠によれば、被告人が小西卯三郎から前記のような意味の募集の依頼を受けて募集行為をしたことを充分認めることができるから、論旨は理由がない。

論旨第二(量刑不当)について、

しかしながら、原審において取り調べた証拠によつて考察すると、所論の点を考慮に入れても、本件犯罪の態様その他諸般の情状を綜合すると、原判決の刑の量定が重過ぎることはないから、論旨は理由がない。

なお、職権で調査すると、原判決は、被告人の村屋美代子、柳田アサミに対する募集従事行為を包括一罪と認定している。しかしながら、職業安定法第六三条第二号の罪は、公衆衛生上の目的と共に、被募集者の人格を保護することをも目的としているものと解されるので、右罪は各被募集者毎に一罪を構成するものと解するのが相当である。したがつて、前記のとおり包括一罪とした原判決は法令の適用に誤があり、この誤は判決に影響を及ぼすことが明かであるから、この点において原判決は破棄を免れない。

(裁判長裁判官 二見虎雄 裁判官 後藤寛治 裁判官 矢頭直哉)

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